第2戦 予選&決勝レポート|歴戦の王者・室屋が今季初優勝、新星デルーを下しランキング首位に浮上

2025シリーズ第2戦・予選&決勝レポート

テクニカルな三部構成トラックが勝負を分ける

── スラローム、ハイ&ローターン、ファイナルスプリント

2025年シーズンは、年間ランキング首位のパトリック・デビッドソン選手(南アフリカ)を10ポイント差で室屋義秀選手(日本)が追う構図で開幕。第2戦のレーストラックは、大きく3つのセクションに分かれており、各パートで異なる技術と判断力が求められます。

最初の「スラローム」セクションでは、左右へ滑らかに切り返すライン取りが鍵を握り、精密な操作がタイムに直結します。続く「ハイ&ローターン」では、高低差のあるターンを連続でこなす中、最大10Gを超える荷重がパイロットにかかり、正確な進入角と体力が問われます。そして終盤の「ファイナルスプリント」では、加速性能とライン維持のバランスが勝負の行方を左右します。

スタートして最初に待ち受けるのは、左右へとなめらかなラインで飛ぶことがポイントの「スラローム」。続いて高さの違う折り返しを繰り返す「ハイ&ローターン」では、最大で10Gを超える荷重に襲われる中、パイロットは次のゲートに向けて正確な操縦が要求されます。そして「ファイナルスプリント」で一気に加速しつつゴールを目指します。

予選は昨年の年間チャンピオン室屋選手と、ポイントリーダーのデビッドソン選手、そして参戦2年目のエマ・マクドナルド選手(オーストラリア)とルーキーのアーロン・デルー選手(オーストラリア)という新世代のパイロット3名が、60秒を切るタイムで上位争いをするという展開となりました。

デルーが予選最速、57秒台で堂々のトップ通過

── 室屋・デビッドソンも僅差で追走、上位は歴代王者の名機揃い

予選では、2024年王者の室屋選手、現在ポイントリーダーのデビッドソン選手、そして若手のエマ・マクドナルド選手(オーストラリア)、アーロン・デルー選手(同)の4名が、60秒を切るハイスピードな争いを展開。

この熾烈な戦いを制したのは、なんとルーキーのデルー選手。57秒335という唯一の57秒台をマークし、わずか2戦目とは思えない速さで予選トップに立ちました。

Rd.2 Qualifying 2025

予選公式結果

若き才能と伝説のマシンが織りなす競演

── デルー、マクドナルド、デビッドソン──新世代が紡ぐレガシー

デルー選手が操る機体は、2016年にマティアス・ドルダラー選手(ドイツ)が年間王者に輝いた名機。そのポテンシャルを最大限に引き出す操縦技術は非凡であり、まさに新時代の到来を予感させる存在です。

また、参戦2年目のマクドナルド選手は今回、師である2019年王者マット・ホール選手(オーストラリア)の旧機体を初使用。初搭乗ながら即座に速さを見せ、順応力の高さを証明しました。

さらに、デビッドソン選手が駆る機体は、2008年に故ハンネス・アルヒ選手(オーストリア)が年間王者に輝いた伝説の機体。若きパイロットたちが歴史ある機体で競い合う構図は、AIR RACE Xが過去から未来へとつながる競技であることを象徴しています。

準決勝はトップ4が激突、室屋がトラックレコード更新

── 精密な操縦と空力改良が勝負を左右

決勝トーナメントでは、予選上位の4名──デルー、室屋、デビッドソン、マクドナルド──が順当に準決勝へと駒を進めました。室屋選手はこの日、57秒005というトラックレコードを樹立。新たに投入されたウイングレット(主翼端の空力制御パーツ)が、その飛行にさらなる安定性と鋭さを加えました。

準決勝ヒートAでは、室屋選手とデビッドソン選手が激突。中盤の「ハイ&ローターン」で、室屋選手はスムーズな進入と最小限のエネルギーロスで差を広げ、接戦を制しました。

ヒートBでは、デルー選手がマクドナルド選手とのオーストラリア対決を制します。スラロームで先行し、中盤以降の粘りもあり最後まで主導権を渡さず勝利しました。

決勝は室屋vsデルー、王者とルーキーの真っ向勝負

── 経験と精度が光った室屋、痛恨のミスで敗れたデルー

決勝は、室屋選手とデルー選手による“王者×ルーキー対決”。デルー選手はレース前、「室屋選手はF1で言えばルイス・ハミルトン、自分はまだ経験の浅いキミ・アントネッリのような存在」と語り、謙虚ながらも挑戦者の意欲を見せていました。

レース序盤は互角の展開でしたが、ハイターンセクションで室屋選手がじわじわとリード。終盤、デルー選手は2回目のローターンでわずかにラインを乱し、次のゲートへの進路を見失う痛恨のミス。結果、室屋選手は57秒930でフィニッシュし、デルー選手(60秒568)に差をつけて圧勝。経験と精度が決勝の勝敗を決定づけました。

3位決定戦では、デビッドソン選手がマクドナルド選手を下して表彰台を確保。5位以下は準々決勝のタイムによって決定されました。

決勝トーナメント公式結果

Rd.2 Finals 2025

最終順位決定、室屋が総合30ポイントでランキング首位へ

── デルー、デビッドソンが続き、チャンピオン争いは最終戦へ

シリーズランキング

シーズン最終戦は大阪・うめきた、三つ巴の決戦へ

── 関西初開催の地で、栄光のタイトルを懸けた最終章が始まる

室屋選手は今回の勝利と予選ポイントを合わせて30ポイントを獲得し、デビッドソン選手を2ポイント上回って年間ランキング首位に浮上。しかし、両者の差はわずか2ポイント。さらにデルー選手も逆転王者を狙える位置に控えており、混戦模様はますます激しさを増しています。

2025年シーズンのフィナーレとなる第3戦「AIR RACE X 2025 積水ハウス 大阪うめきたデジタルレース」は、9月6日(土)に開催。AIR RACE Xとして関西初上陸となる注目の一戦で、チャンピオンの座をかけた三つ巴の戦いがついに決着します。
チーム一丸となって挑む今シーズン最大の山場──その瞬間を、どうぞお見逃しなく。

Text by Tamaki Sakimura

最終戦・大阪大会 予告